当事務所に寄せられた離婚問題に関する
ご質問の一部をまとめました。
ご参考にしていただければ幸いです。

よくある質問カテゴリー

裁判所が認める離婚原因の一つに、「回復の見込みがない強度の精神病」があり、それに該当する場合には離婚が成立します。そのような場合でなくても、精神病が原因で、激しい攻撃(暴力・暴言)を受けている場合には、離婚できる可能性があります。

暴力・暴言を受けている場合には、それらを証拠・記録として残しておく必要があります。暴力によってできたあざの写真を撮っておく、通院した際の記録を残しておく、暴言を録音しておくなど、第三者に証明できるようにしておくことが大切です。

ただし、質問にある“うつ病”に限ると、重度の精神病だと判断される可能性は極めて低いです。配偶者がうつ病になった場合には、むしろ夫婦で生活を補助しなければならないと判断されるので、離婚をすることは難しいでしょう。

相手方の合意がない場合には、残念ながら、離婚を成立させることはできません。

協議が成立しない場合には、素早く調停を申し立てるのが良いでしょう。調停もあくまで裁判所で話し合いをする手続きなので、条件面での調整がつき、離婚の合意がなければ成立できません。ただし、調停を申立て、相手方にも事の重大さを認識してもらうことで、話し合いが進むということもあります。

調停での話し合いでも合意できなければ、訴訟に移行します。訴訟では、裁判所が離婚が認められる原因があるかないかという点で判断されます。裁判離婚に必要な事由は下記の5つの離婚原因に分類されます。>> 離婚に必要となる事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みがない強度の精神病
  • その他の婚姻を継続しがたい重大な事由

当事者同士で話し合いをしている段階では、感情論が先立って話し合いが進まないことも多々ありますが、弁護士が入ることで、相手方にも弁護士が付き、それぞれが置かれている状況を把握した上で、冷静な話し合いができるケースがほとんどです。

まずは一度、弁護士にご相談されることをおすすめします。

不倫と離婚理由

夫が「不倫」しているということですね。ここでいう不倫が肉体関係なのか、肉体関係まではないが、交際している関係なのかで少しだけ法律関係が変わってきます。

肉体関係があれば「不貞行為」に該当し、それだけで離婚の理由になります。

他方、肉体関係が無い交際関係の場合、それだけでは離婚の理由にはなりにくいのですが、交際によって結婚が破綻している場合は、離婚理由になる場合があります。

離婚の手続き

離婚の手続きには協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。
夫が離婚に応じてくれない場合、協議離婚、調停離婚は難しいと思います。

しかし、ご自身の交渉には応じなくても、弁護士などの第三者が交渉すれば夫が離婚に応じるかもしれません。そうすれば協議離婚や調停離婚でも離婚が成立するかもしれません。

どうしても話合いが難しく、協議離婚や調停離婚が成立しないようであれば、裁判離婚ということになります。

戦前の民法には、「配偶者の直系尊属」つまり、夫の親から虐待や重大な侮辱を受けていることが、離婚原因として規定されていました。これはいわゆる「家」制度を前提とした規定でした。

ところが、戦後、憲法が改正され、「家」制度が否定されたことから、配偶者の直系尊属から虐待や重大な侮辱を受けている場合の離婚を定めた規定は無くなりました。家制度が否定された以上、離婚原因は夫婦間の事情に基づいて決めなければならないからです。

では、戦後、親族と不仲になった場合に全く離婚原因が認められないのかというと、そうでもありません。
妻と親族が不仲になったとき、夫が一緒になって妻を攻撃したり、妻が攻撃されているのを知りながら夫が放置した場合に、夫の態度が離婚原因になる場合があります。

裁判例の中にも名古屋地裁岡崎支部昭和43年1月29日判決、東京地裁昭和38年5月27日判決など、妻と親族との不和を知りながら夫がなにもしなかった事例や、夫が積極的に不和状態と同調した場合に離婚原因を認めた事例があります。

なお、これらの事例では併せて離婚慰謝料も認められています。

以上のように、姑と不和になった場合、夫の態度によっては離婚が認められる場合がありますし、慰謝料も請求出来る場合があります。

しかし、これについては明確な回答がありません。
別居が長期化すれば「破綻」していると評価できる場合が多いでしょうが、結局はケースバイケースだと思います。

あえて期間を言うとすれば、平成8年の法制審議会の「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居を継続しているとき」にあるように5年がひとつの目安なのかもしれません。
>> 詳しくはこちら

なお、3年別居すれば離婚が認められるのですかという質問もよく聞きます。
これも、3年という数字には根拠がないといわれることもありますが、「控訴審からみた人事訴訟事件」(安倍嘉人、家庭裁判月報 60(5), 1-55, 2008-05)という裁判官の方が書かれた文献には「例えば3年プラス1年、マイナス1年という範囲を破綻の一つのおおよその枠として考えるということもありえると思います。」との記載があります。
これを見ると、3年程度という意見も根も葉もない話とは言えないと思います。

なお、自ら不貞を行ったなどの有責配偶者からの離婚請求の場合は、相当長期間の別居が求められており、以上の話は当てはまりません。

親権者に関するQ&A

親権者を指定する場合に、裁判所が参考にしているのは、

  • どちらが「主たる監護者」か
  • 悪意の遺棄
  • 監護環境が変化するか
  • 子が父母のどちらと住むことを希望しているか
  • 面会交流をさせる意思があるか
  • きょうだいを分けることになるか
  • 監護を始めたときの態様

だと言われています。

このうち、子供が幼い間は、①の「主たる監護者」が夫と妻のどちらかが重視され、子供が成長するに従って、③の「子供の意思」が重視されるようになります。

主たる監護者というのは、それまでどちらが主に子供の世話をしてきたかということです。一般に、妻が子供の世話をすることが多いので、妻が親権者となる場合が多いです。

また、子の意思については、子供が10歳程度になれば参考に出来ると考えられています。
ですので、子供の世話をしてきた実績があり、子供たちが妻より夫と暮らすことを希望していれば夫が親権者になることも考えられます。しかし、子供の世話をしてきたのが妻で、子供たちも妻と暮らすことを希望しているのであれば、通常は妻が親権者となります。

ただし、例えば夫が子供たちを連れ去って、妻が何もしないまま時間が経ち、子供たちがその状態で安全に生活しているような場合には、夫が親権者となることも考えられます。夫による子の連れ去りには十分注意する必要があります。夫が子を連れさって別居を開始した場合、すぐに警察に連絡し、できるだけ早く弁護士に相談した方が良いでしょう。

なお、夫の言い分として「妻には収入がないから育てられない」というものがありますが、親権を決めるときに、妻の収入はほとんど考慮されません。妻に収入が無い場合、収入がある夫が妻に養育費を払うということになります。

ほとんどの場合、夫の自信は根拠が無いことが多いと思いますが、自分の場合どうなるのか詳しく聞きたければ、弁護士に相談すると良いでしょう。

監護権とは、親権の中に含まれる身上監護権のみを取り出して、子どもの世話をする権利のことです。本件では、娘さんの面倒はご相談者様が見られるとのことですので、監護権もこちらにあります。

離婚届けには親権者について記入する欄があり、無記入での提出は認められません。すなわち、離婚届を提出する時点では離婚後の子どもの親権者を指定しておかなければなりません。親権者と監護者とを分けることは可能ですが、運用実務上は好まれません。

現在の日本の法律では、離婚後の子どもの親権はどちらか単独でなければならず、一部の国で認められているような共同親権制度は認められていません。それが原因で婚姻中から子の奪い合いに発展する問題がしばしば見られ、共同親権制度を導入すべきという動きも見られます。

まずは親権と監護権との違いを理解する必要があります。親権は、未成年の子どもに代わって財産を管理し、財産関係の契約を代理でする権利(財産管理権)を有します。親権では、財産管理権のほかに身上監護権も含まれます。身上監護権では、子どもを養育したり、叱ったりする権利(懲戒権)も認められます。

監護権のみを取るということは、上記の身上監護権のみを取得することになります。15歳未満の子どもがいる場合、子どもの養子縁組の承諾をできるのは親権者ですが、監護者の同意も必要であるとされています。一方が知らぬ間に養子縁組をする可能性を排除するために、親権者と監護者と分けることがあります。但し、実際には、親権者と監護権者を分けることはほとんど行われていません。

もし親権者と監護権者を分ける場合の手続きですが、当事者間の話合いで協議書を作ることも出来ますし、離婚調停の中で監護者と親権者を分けるという合意をすることも出来ます。

具体的に、どのようにすれば良いかについては弁護士に相談すると良いでしょう。

一旦母親が親権者になっていますので、親権を変更するには親権変更の手続が必要です。親権者の変更は親同士の話合いでは出来ず、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる必要があります。

調停や審判では、親権者の変更が子の利益のため必要があるといえるかが検討されます。

その際、従来の親権者の監護状況に問題があるか、子どもが分別能力を備えていれば子どもの意思はどうか、という観点が基準になります。ですから、その範囲で子どもの意思は親権に影響すると言えます。

親権を決める基準には、母性優先の基準、継続性の基準、子の意思尊重の基準、きょうだい不分離の基準、面会交流の許容、奪取の違法性、などの基準があるといわれています。

ただ、当職の経験では、家庭裁判所は、以前から今まで子どもを中心的に養育してきたか否か、子どもの意思はどうか(子どもに判断能力がある場合)、という考え方で、親権者を決定していると感じています。

要するに、不貞を働いた側であるか否かは親権者の決定にはあまり影響しません。

養育費に関するQ&A

養育費の金額については裁判官の研究成果として発表している算定表を基準に考えられます。毎月の養育費の金額については、基本的には算定表通りに決まることが通常ですので、習い事や塾に通っているなどの事情は認められにくいでしょう。

ただし、子どもが私立学校に通っている場合においては、そのことについて相手が同意していたり、両親の学歴や居住地域の進学状況などが考慮され、算定表の基準よりも高い金額で養育費を計算することがあります。

算定表の基準通りに決定することは多いですが、あくまで基準であり、法的な強制力を持つものではありませんので、個別事情については、一度専門家にご相談されることをおすすめします。

離婚後の養育費は合意の上で決めました。しかし、子供が私立中学に通うことになり、その分養育費の増額をして欲しいのですが可能でしょうか。

養育費は子どもが大人になるまでの期間支払われなければならず、ふつうは長期間になります。

離婚時に養育費を決めたとしても、未来のことをすべて見通して決めることは出来ませんから、予想困難な事情の変更があれば増額、減額を認める必要があります。

例えば、失業・病気・事故などによって父母の経済状態が変わったり、教育費用が増加したなどの事情の変更があれば、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて、養育費の増額を請求することが認められています。

ですから、子どもが私立中学に通うことになることが養育費の増額理由になることは十分に考えられます。

親は子供を養う義務(扶養義務)があります。この扶養義務はあくまで親の子に対する義務です。
元の妻が再婚したからといって、実の親との親子の関係がなくなるわけではありませんし、再婚相手と子どもが親子になるわけではありません。

ですから、元の妻が再婚したからといって、子どもへの養育費の支払いを打ち切ることはできないと考えられます。

もっとも、再婚相手と子どもが養子縁組をすれば話は別です。
養子縁組によって、再婚相手と子どもは親子関係になり、再婚相手が子どもに対して扶養義務を負うからです。
この場合、実の親も、養親も両方が扶養義務を負うことになりますが、養親が第1順位、実親は第2順位の扶養義務を負うと考えられています。
先順位の扶養義務者に扶養能力があれば、後順位者に扶養能力があっても具体的な扶養義務は発生しません。

結局、養親が養子の扶養義務を負うということになります。
ですから、元妻の再婚相手が子どもと養子縁組をすれば、養育費の支払いを打ち切ることは可能になります。 まずは、元妻に養育費の減額や打ち切りを申し入れましょう。

もし、話し合いがうまくいかなければ調停を申し立てるべきです。

面会交流に関するQ&A

面会交流の条件を調整する場合には、当事者間で話し合いをするか、調停を申立て、裁判所での話し合いにするかの二つの選択肢が考えられます。当事者間の話し合いで解決できれば理想的ですが、本件のようにそれが叶わないケースも多いと思います。

そのような場合に弁護士が交渉に入ることで解決するということもあります。但し、弁護士が交渉をしても、それ自体に強制力・確実性はないので、確実性を求めるのであれば、調停を起こすしかありません。

むやみに調停を起こしてしまうと、相手方を必要以上に刺激することになってしまい、かえって話し合いが進まないということがありますので、柔軟性と確実性とのバランスを意識しなければなりません。

調停においても緩やかな条項を作ることが多く、細かい条件までは定めないのが一般的です。一方で、条件を定めなければ、強制執行をすることができないので、確実性を重視するのであれば、細かい条件まで取り決めなければなりません。

定めた面会交流の条件がまったく履行されない場合には、裁判所が細かく条件まで定めるケースもあります。「月に1回程度」と定める場合が一般的ですが、「毎月第○週目の×曜日、何時~何時まで、場所は△△」といった日にちまで決めることもあります。条件を詳細に定めることで、面会交流の間接強制を働かせることができるという、判例も出ています。

面会交流の回数については、月2回でも認められれば理想的ですが、運用上は月1回程度というのが基本になります。

原則、面会交流を拒むことはできませんが、ケースによっては面会交流の変更や、禁止、制限すること等の対処は可能です。対応について、一度ご相談ください。

親権者や監護していない親(子どもと一緒に住んでいない親)が子どもと会うことを面会交流と言います。面会交流権は親が子どもに会える権利というだけでなく、子どもが親に会える権利でもあります。心理学的にも、親に会えることで子どもが健全に発達すると考えられています。ただし、元夫が子どもに対して虐待を行っていたなど、面会によって子どもの利益が害されるような場合には面会交流(直接交流)を禁止又は制限すべきです。

面会交流には直接交流だけでなく間接交流も含みます。間接交流は、直接会わせるのではなくビデオ通話や、手紙のやり取り、写真や動画を送る行為のことです。

諸事情で直接会わせるのが嫌な場合は、間接交流をにすることで面会交流を実施したと評価出来る場合があります。直接会わせるのは嫌だけど、送ってもらった手紙を渡す程度で対応することも一つの方法となります。

財産分与に関するQ&A

離婚後であっても、財産分与の条件を変更することは可能です。離婚をする際に、財産分与の条件まで決めておかなくてはならないわけではありません。離婚後であっても条件を決めることはできるので、焦って不利な条件で同意しないことが重要です。

ただし、財産分与を請求できる期間には制限があり、離婚後二年以内に請求をしなければなりません。ですので、本件では離婚から1年半が経過しているということで、早めに請求するのが良いでしょう。

通常、請求できる期限については、時効の中断・停止というものがありますが、財産分与の二年は消滅時効期間ではなく除斥期間として捉えられるため、中断・停止をすることができませんので、特に注意が必要です。

退職をする前であっても、実務上は退職時期が近い場合には、分与対象として扱います。

財産分与における将来の退職金について、かつてはその蓋然性の高低によって争われるケースも多かったのですが、最近の運用実務では、退職の時期がかなり先の場合でも、財産分与の対象としています。対象となる時期については個別事情により異なるので、注意が必要です。

退職金については、対象が公務員であったり、大企業に勤めていたりする場合に、特に認められやすい傾向にあります。これも、財産分与取得の蓋然性が高いという判断からです。

残念ながら、ご自身が買われた場合でも、財産分与の対象となります。夫婦が共同生活をしている間に取得した財産については、財布の出どころに関わらず、夫婦の共有財産として考えられます。

本ケースのように、夫婦一方が多額の出資をして購入した資産についての財産分与に関するご相談をお受けすることも多くありますが、二分の一ルールの運用効力が強く、分与の対象外とすることは難しいです。

ただし、その外車が結婚する前に購入していたものであったり、ローンが多すぎてそもそも分与ができなかったりという場合については、財産分与の対象とはなりません。

財産分与の割合については、二分の一にするというのが原則的で、例外が認められるケースは多くありません。財産分与の基本的な考え方として、婚姻期間中に作った財産は、夫婦共有財産として、両方が同じ割合で貢献していると考えられています。二分の一ルール自体は法律で定められているものではなく、実務運用上の原則でしかありませんが、強い効力を持っているのが実情です。

ただし、財産への貢献が明らかに違う場合には、財産分与の割合が二分の一にはならないこともあります。本件のような会社の経営者の方や芸能人の場合には、「一方の特別な能力で財産に貢献した」として、財産形成に対する寄与の割合の違いを認められる場合もあります。

個別事情により異なりますので、一度専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。

マイナスの財産でも、財産分与の対象となる場合があります。
ただし、マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合は、分与の対象にはなりません。

財産分与をする際には、まず初めに夫と妻それぞれが婚姻期間中に取得した財産の総額を出し合います。ただし、親からの相続財産などは除きます。そこで出てくるプラスの財産とマイナスの財産とを足し引きして、残った分を財産分与の対象とします。

当然、残った財産がプラスであれば、それを分け合うことになります。

その割合については、二分の一ずつ分け合うのが一般的です。(分与の対象となる(ならない)財産、分与の割合については、「財産分与について」のページをご参照ください。)

一方で、それぞれの財産を足し引きして、マイナスの財産しか残らない場合には、残った分について財産分与の対象とはなりません。

よくあるケースとして、所有している不動産がオーバーローンの場合などは、分与の対象とはならず、夫婦のいずれかがローンを引き継ぐことになります。不動産のオーバーローンについては、保証人や連帯債務者がいる場合に、財産分与の仕方が変わります。

これらについては事案により運用が異なるので、是非ご相談ください。

必ずしもそうとは言えず、ケースバイケースということになります。
離婚時に夫がローンを支払い、妻と子どもが住むという取り決めをすることも時々行われています。

とはいえ、離婚の際に住宅を財産分与によって取得する場合、住宅ローンは財産分与によって住宅を取得した方が引き受けることが多いのが実情です。

可能です。

退職金は、すでに、預貯金や不動産等さまざまな形の資産に変化していると考えられるので、預貯金や不動産の分与を請求することになります。

なお、妻が退職金に貢献したのは結婚期間中のみですので、分与の対象になるのは結婚期間中の分の退職金になります。

夫婦別産制

まず、離婚が問題になっていない状態で、夫婦の財産関係がどのようになっているのかを見てみましょう。
夫婦の一方が結婚前から持っている財産や、結婚中に自分の名前で取得した財産はその人の財産として、夫婦の一方に属します。これを夫婦別産制と言います。夫婦の財産は、原則として、その名義人のものと言うわけです。夫婦の一方が作った借金も、日常生活のために使った借金(日常家事債務といいます。)を除いて、夫婦の他方は負わないと考えられています。

これが、離婚が問題なっていない状態での夫婦の財産関係です。

財産分与

では、離婚が問題になっている場合はどのように考えるのでしょうか。
結婚の形はさまざまですが、結婚期間中、多くの場合、夫が主として労働し、妻が家事をしたりパートに出たりすることが多いと思います。妻のこのような家事労働によって、夫は財産を得ることが可能になります。

すると、結婚期間中に得た財産は、一方の(夫の)名義であっても、実質的には夫婦で得た財産と考えて清算するのが公平です。このような考えから、離婚時に夫婦の財産を清算するのが財産分与の制度です。

つまり、財産分与は、負債よりも資産の方が多い場合に、公平に財産を分ける制度ということになります。

負債より資産が多い場合

この場合は、資産から負債を引いた差額が財産分与の対象になります。 例えば、夫の資産が1,000万円、負債が600万円で、妻の資産が200万円、負債は100万円とします。この場合、{(1,000万円 - 600万円)-(200万円 - 100万円)}÷ 2 = 150万円が分与対象財産になります。
このように処理するのが公平であると考えられています。

資産より負債が多い場合

ところが、資産より負債が多い場合には、通常、その負債は財産分与の対象にはならないと考えられています(ここでは触れませんが、多少の例外があります)。離婚時の清算という観点からは、負債も二人で分けた方が良いようにも思えますが、そもそも財産分与は資産を分けるための制度ですので、負債のみの場合は財産分与の範囲外と考えられています。
また、負債を分けると、銀行などの債権者と夫婦との関係や、離婚後の夫婦間の清算の問題など、かえって問題が複雑化してしまうことが考えられます。

例えば、夫の資産が600万円、負債が1,000万円、妻には資産も負債もないような場合、200万円の負債を妻が引き受けることになりそうですが、この場合、夫名義の400万の負債はあくまで夫が負担することになります。

以上のように、夫婦の一方が作った借金は、夫婦の負債よりも夫婦の資産が多い場合には実質的に夫婦の負担となりますが、資産よりも負債が多い場合には夫婦の他方は負担しない、ということになります。

もちろん、夫婦の間でこれとは違う合意をすることは差し支えがありませんから、合意によって相手の債務を負担してあげることは可能です。

慰謝料に関するQ&A

学説の中には、不貞相手への慰謝料請求を否定する見解もありますが、判例は不貞相手に対する慰謝料請求を認めています。

実際に慰謝料を請求する場合に問題になるのは、不貞が認定できるほどの証拠があるかどうかです。最近ではラインやメールを証拠とすることが多いですが、ラインやメールだけで性交や性交類似行為を証明できる場合は多くありません。ホテルの領収書や、飲食店の領収書、不貞相手とホテルや相手の自宅を出入りする場面の写真、不貞を認めた夫の発言の録音など、複数の証拠を取れるように努めましょう。

また、実際に請求するには不貞相手の住所、氏名も必要です。
不貞相手は、「夫が結婚していることを知らなかった」という言い訳をしてくることが多いので、可能なら夫と不貞相手の関係も調査すべきでしょう。

具体的な証拠の入手方法や、手持ち証拠で不貞を立証できるかどうかの判断は、弁護士に相談すると良いと思います。

獲得できる慰謝料の金額については、個別の事情により大きく異なるため、一概には言うことができません。

とある裁判官の調査によると、210万円くらいが慰謝料請求の平均値だそうです。100万円前後の支払いがされているケースもあるようですが、高い場合では500万円程度にもなるため、平均して200万円前後になるようです。

慰謝料の請求金額を決める際には、相手の収入も大事ですが、不貞の期間や回数、頻度など、様々な要素で決定がされます。本件のように年収が高い方が高額化する傾向にはありますが、いくらになるかまでは断言できません。

もし、慰謝料請求をお考えなのであれば、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

離婚はせずに慰謝料のみを請求することは可能です。当事務所にも、配偶者、不倫相手に対して慰謝料請求のみを依頼したいというご相談も多く寄せられています。

いざ慰謝料請求をする際には、証拠の確保が最も重要になります。残念ながら、確実な証拠がなければ慰謝料を請求することは難しいのが現実です。相手方に証拠を隠されてしまうというおそれもありますので、感情的になってすぐに問いただすのではなく、証拠を取ったうえで切り出すのが良いでしょう。

証拠の典型的なケースは、携帯電話に残されたメールを見て、浮気が発覚するというものですが、文面の内容によって、証拠としての価値が変わります。証拠の価値という点では、夫に自白をさせ、その音声を録音しておけば、確実ですが、まずは、携帯の文面を写真に残しておくことが重要です。

ただし、配偶者が浮気をしているケースでも、今後も夫婦生活を継続したい、できる見込みがある場合には、すぐに慰謝料請求をするのではなく、慎重にタイミングを見計らうことが重要です。

また、不倫相手に慰謝料請求をすることで夫婦関係が改善するということもあります。相談者の中には、配偶者に言わないまま、不倫相手に慰謝料を請求したいというご要望もありますが、傾向として、問題が更に複雑化してしまうことが多く見られます。

相手の特性や切り出すタイミングによって、交渉が有利に働いたり、不利に働いたりということがありますので、一人で行動をしてしまう前に、弁護士に相談をして、戦略を立てるのが良いでしょう。

当事務所での解決事例

>> 不貞をした夫が反省し、早期に慰謝料請求が解決した事例

慰謝料金額は事情によって異なりますので明確な金額を示すことはできません。
一般に不貞慰謝料は100万円~500万円程度で、平均は200万円程度であるといわれています。
2度目の浮気ということですが、2度目の浮気により精神的苦痛が増大したのであれば、慰謝料額にも反映されるべきです。
もっとも、具体的にいくら増えるということはケースバイケースであり、お答えできません。

慰謝料請求は原則として3年で時効になります。問題なのは何時から3年間なのかです。

法律の条文(民法724条)には「損害および加害者を知った時」から3年と書いてあります。

まず、不倫(不貞)慰謝料を請求するとき、夫や妻の不倫相手の身元が全くわからないような場合は、調べてわかったときから時効がスタートします。ですが、ずっと相手がわからない場合、ずっと時効にならないかというとそうではなくて、不貞行為発生から20年で時効になります。

不倫が続いていた場合、その不倫関係と不倫相手を知ったときから時効がスタートします。ただ、不貞が続いていても、不倫の結果、夫婦が離婚した場合には、不倫の相手に対する慰謝料は離婚のときからスタートするとした裁判例(東京高判平成10年12月21日判タ1023号242項)があります。

離婚による精神的苦痛に対する、夫や妻への離婚慰謝料については、原則として離婚のときから時効がスタートします。

以上のようにスタートした時効期間も、裁判をおこしたり調停をおこしたり、相手が慰謝料の支払いを認めた場合は中断します。

広島高等裁判所の平成19年4月17日判決は、不倫されたAさんが、夫に不倫(不貞)関係についての慰謝料を請求する裁判をして300万円の慰謝料を得た後、離婚の裁判を起こし、慰謝料を請求した事案です。

一審の裁判所は、前訴の不倫(不貞)の慰謝料300万円とは別に、離婚の慰謝料として100万円の支払を認めました。

これに対して夫側は、不倫(不貞)の慰謝料と離婚の慰謝料は同じであり、同じ裁判を二度やるようなことは許されないという趣旨の主張をして争いました。

控訴裁判所は、要するに、不倫(不貞)慰謝料と離婚慰謝料は別の権利だけど、慰謝料請求は認めない旨の判断をしました。

控訴審は、本件における慰謝料請求権と前訴の慰謝料請求権は訴訟物が異なるものといわざるを得ず、前訴の既判力は、本件の慰謝料請求には及ばないと解するのが相当であるといいながら、前の不倫(不貞)慰謝料訴訟では不倫(不貞)で結婚が破綻したことも含んで慰謝料額を決めていたから、後の離婚慰謝料訴訟では新しい精神的損害は発生しないといった感じの判断をしています。

相当わかりにくいですが、不倫(不貞)慰謝料と離婚慰謝料は権利としては別だけど、実際の損害を算定する場合には重複する部分が大きいということでしょうか。

一審では、不倫(不貞)慰謝料300万円とは別に離婚慰謝料100万円を認めているので、不倫(不貞)慰謝料とは別に離婚慰謝料も取れるという考えも成り立つことが分かります。

ですが、不倫(不貞)を原因に離婚する場合、不倫(不貞)の精神的苦痛も離婚の精神的苦痛も同じようなものだから、不倫(不貞)慰謝料とは別に離婚慰謝料を取れない場合もあると考えていた方が良さそうです。

婚姻費用分割請求に関するQ&A

生活費を請求することは可能です。
婚姻関係にある夫婦においては、別居中であったとしても、相手の生活を扶養する義務があります。この際の費用を婚姻費用>> 婚姻費用について )といいます。婚姻費用は原則、所得の多い方が、少ない方に渡すことになります。また、婚姻費用の金額については、裁判所が作った算定表に基づいて計算されます。( >> 養育費・婚姻費用算定表

いざ婚姻費用を請求する場合には、婚姻費用の分担請求の調停を起こす必要があります。受け取れる婚姻費用については、調停を起こす前の部分が含まれないので、別居をしたらすぐに調停を起こすのが良いでしょう。

別居をする際に、子どもを連れて家を出ることを気に病む相談者の方も多くいらっしゃいます。しかし、親権者を決定する際には、子どもの現在の生活状況が大きく考慮されるので、子どもを置いて出て行ってしまうことで、親権を取れないリスクが出てきてしまいます。

特に、本件のようなモラルハラスメントを受けている場合やDV被害を受けている場合など、家庭環境が子どもにとって良好じゃない場合には、子どもを連れて出ることは問題ありません。

夫婦である間は、互いに扶助する義務を負っていますから、別居中の生活費を請求できます。
しかし、その後離婚すれば、もはや他人同士であり、原則として生活費を請求することはできません。

では、質問のように、離婚後に元妻が元夫に生活費を支払うという取り決めをした場合効力はどうなるのでしょうか。

日本社会の実情を見ると、妻が専業で家事をしたり、仕事を持っていても家事や育児は妻が中心になって行われることが多いと思います。
そうすると、妻は十分に仕事をすることができず、キャリアアップも不十分になります。
このような夫婦の間の役割分担により、結婚期間中、妻は夫に比べ、稼ぐ力を思うように伸ばすことが難しい状況におちいりがちです。

そこで、離婚後しばらくの間、元妻が所得能力を相当程度回復するまで、元夫がお金を払うことも検討されなければなりません。
このように、離婚後の元妻の所得能力回復のために元夫がお金を出すことを扶養的財産分与といいます。

質問で、取り決めた生活費の支払は、扶養的財産分与を定めたものと考えられますので有効です。
元夫が新たに交際している女性にお金を使うこと自体は自由ですが、それは扶養的財産分与の支払を止める理由にはなりません。

ですので、決められた期間内の生活費を受け取ることは可能であるということになります。

夫婦はお互いに扶助する義務がありますから、夫は別居中の生活費を妻に支払わなければなりません。このような別居中の生活費を婚姻費用といいます。

婚姻費用の請求開始時期については、法律上はっきりとした決まりはありませんが、通常、相手に請求した後であると考えられています。例えば、婚姻費用分担請求調停を申し立てれば、それ以降の婚姻費用を請求出来ます。

質問の場合、夫は婚姻費用を支払うと約束していたというのですから、その合意の後の婚姻費用を支払う義務を負っています。ですから、3ヶ月分の未払い婚姻費用を請求出来ます。

Contact

お問い合わせ

離婚相談の解決のプロフェッショナルが
あなたをサポート致します。
お気軽にご相談ください。