広島高等裁判所の平成19年4月17日判決は、不倫されたAさんが、夫に不倫(不貞)関係についての慰謝料を請求する裁判をして300万円の慰謝料を得た後、離婚の裁判を起こし、慰謝料を請求した事案です。

一審の裁判所は、前訴の不倫(不貞)の慰謝料300万円とは別に、離婚の慰謝料として100万円の支払を認めました。

これに対して夫側は、不倫(不貞)の慰謝料と離婚の慰謝料は同じであり、同じ裁判を二度やるようなことは許されないという趣旨の主張をして争いました。

控訴裁判所は、要するに、不倫(不貞)慰謝料と離婚慰謝料は別の権利だけど、慰謝料請求は認めない旨の判断をしました。

控訴審は、本件における慰謝料請求権と前訴の慰謝料請求権は訴訟物が異なるものといわざるを得ず、前訴の既判力は、本件の慰謝料請求には及ばないと解するのが相当であるといいながら、前の不倫(不貞)慰謝料訴訟では不倫(不貞)で結婚が破綻したことも含んで慰謝料額を決めていたから、後の離婚慰謝料訴訟では新しい精神的損害は発生しないといった感じの判断をしています。

相当わかりにくいですが、不倫(不貞)慰謝料と離婚慰謝料は権利としては別だけど、実際の損害を算定する場合には重複する部分が大きいということでしょうか。

一審では、不倫(不貞)慰謝料300万円とは別に離婚慰謝料100万円を認めているので、不倫(不貞)慰謝料とは別に離婚慰謝料も取れるという考えも成り立つことが分かります。

ですが、不倫(不貞)を原因に離婚する場合、不倫(不貞)の精神的苦痛も離婚の精神的苦痛も同じようなものだから、不倫(不貞)慰謝料とは別に離婚慰謝料を取れない場合もあると考えていた方が良さそうです。

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